Alleingehen2.0 SET

「映像を音楽に同期させたライブ」

 

こうして文字に起こしてみるとオーディオ&ヴィジュアルインスタレーションなんて最早使い古された印象を受けてしまう今日。

 

CDが売れなくなった分ライブの動員数が増えてるなんて記事も最近見かけないが、そんな記事のひとつに書いてあった

「所有する喜びより、体験する喜びに価値を見出す時代」

なんてフレーズが妙な引力を放っていて、多分僕はその記事を読んだ時からいわゆる「映像を音楽に同期させたライブ」に対しての意識が変わった気がする。今思えばね。

 

Amon TobinやFlyng Lotusが革新的な手法でオーディオ&ヴィジュアルインスタレーションを行う中、普通に2本のスピーカーからだけの表現法じゃもう足りない時代なのでは?

そんな焦燥感や劣等感にも似た感情が頭の隅にずっとあったけど、僕は彼らのように大きなプロジェクトなんて出来るお金も話題になるような知名度も無いわけで。

でも今はソフトも安いしひとたびネットブラウザを開き検索ボタンをクリックすればある程度の情報なんてそこらじゅうに転がってるこの時代に「とりあえずやってみよう」と思わないことはとても損なことなんじゃないかと強く思い重い腰を上げオーディオ&ヴィジュアルという未開のルートへ足を踏み入れた。

 

3月に発表したフルゴルジェアルバム「Alleingehen2.0」は映像を同期したライブを前提に制作した作品で、全ての楽曲が完成しBandcampにアップロードし終えるとすぐに映像の制作に取りかかった。

セットのイメージは霧が立ち籠めた山頂で単独行クライマーが見た幻覚のような映像・サウンド。スモークを焚きまくりそれをスクリーン代わりに映像を投影するという手法。

新作ライブセットのお披露目は月末のリリースパーティだ。

 とはいっても僕はその瞬間まで映像制作に触れたことがない全くの素人なわけでそんな簡単に映像を扱えるはずもなく、持ち時間45分の映像制作は恐ろしく大変だった。

 

 

 

まず僕は映像をどうやって出力するかを考えた。

単独登攀という意味の「Alleingehen2.0」を冠した新作セットは映像・楽曲全てを一人で現場管理していくのが前提であり、映像担当のサポートメンバーを用意できない。

MacBookProをもう一台買ってそれにVJソフトをインストールさせて〜なんてことは予算がかかりすぎて出来ないし、Ableton Liveを動かしつつバックグラウンドでVJソフトをReWireで立ち上げて〜なんてのもかなりコントロールが大変そうだ。というかそんなシステムを構築しつつVJソフト扱えるようになるには時間が足りなさすぎる。

 

そこで僕が考えたのはAbleton Live付属のMax for Liveで映像出力パッチを構築し、Ableton Live上でセットに寄り添う形で45分のメイン映像を走らせ、要所要所で飛ばし系映像やエフェクトを加えて行くというものだ。

早速Max for Liveでパッチを構築していく。この作業も初めてだったんだけど、インターネットって最高だね。ネット上には数々の有志たちがたくさん自作パッチを公開してるフォーラムが沢山あって、それらに手を加える形でなんとか完成。

 

次に取りかかったのは一番重要な映像素材。

映像素材を売ってるサイトで自分の好みの素材を探すんだけど、これが結構な値段するんだ。10秒の素材に7、80ドルなんてのも珍しくない。こんなんじゃ45分の映像を作るのに一体いくらかかるんだと思ったところにまたしてもインターネットの恩恵が!

Vimeoには沢山の有志によって公開されたFree VJ Loopの山!

本当はダメなんだけどメインはそれらを使うことに。色々な検索ワードを駆使してとにかく時間をかけて自分の理想に近い映像を集めまくった。ゴルジェならではの山や岩の素材や僕が大好きなコンテンポラリーダンスなんかも探したな。

でも実は結構落とし穴があって素材によっては画質が悪かったり、16:9のハイヴィジョン素材が欲しいけど4:3だったりと結構苦労した。

どうしても欲しい有料素材は勿論購入して使用。これでなんとか素材は揃った。

 

ここまでで約2週間近くかかった。すぐにセットに合わせ編集を始めたんだけど、これが一番のキモだったからとにかく寝る間を惜しんでPCに向かってた。

オーディオ&ヴィジュアルインスタレーションの強みである「音にピッタリと合った映像」を作るために編集はAbleton Liveにて敢行。映像をオーディオデータのように扱えるし楽曲データとともに編集出来るのでとても捗った。

素材自体はiMovieで輝度や色彩を調整しレンダリング後インポートした。

ただ、編集中Ableton Liveがとにかく落ちまくる。特に短いスパンでカットアップしてるとことか。これはレンダリング中も同様で結局書き出しはリリースパーティで自分の出番までに間に合わなかった。

 

今回PCが止まるリスクもあったので楽曲のセットリストは固定して、演奏するパート以外は極力2chマスターにバウンスしたりと工夫した。

映像も同様になるべく軽くなる方がいいだろうと画質が悪くなるが背に腹は代えられぬと高い圧縮率で書き出しを行ったが、ここがまた落とし穴で

音声データのようにmp3などファイル自体のサイズを小さくした方が読み込みも速いと思ってたけど映像に関しては全く逆で、圧縮したファイルを解凍しながら再生するから圧縮率が低い方が再生はスムースなんだと。

 

リリースパーティはここに気付けなかったため、ライブ中2度もPCが止まってしまった。

結局全て映像を再編集した時にPhoto jpegに書き換えたため4/3のライブでは一度も止まらずどうにか終える事ができた。

 

Alleingehen2.0Setを制作するにあたって協力を仰いだのは名古屋在住でVJ(って呼ぶと怒られるかな?)や映像のお仕事をされてるしなさまさん。

彼とは僕がテクノをやってた3年程前に一度大阪で一緒に現場を経験させてもらったが、演出法や映像表現法が本当にすごくって(しなさま祭りと呼ばれてる)その時もスクリーン後方からの単焦点プロジェクタによる映像と正面投射の映像を巧みにミックスされてて本当にすごかった。大きな仕事もされてる方だが恥ずかしいほどド素人な僕に沢山アドバイスをくださった。彼無しでは到底完成できなかったと思う。

 

まあ結果として映像と楽曲に関しては最初から最後まで決まったセットを出力、そこで演奏パートやエフェクトを加える即興性皆無のものでこれからまたトライ&エラーを繰り返し全てを即興で出来るようにしていきたいと思う。ちなみにスモークもフォグマシン一台では到底スクリーン代わりになるほどの煙を出せず今の所はプロジェクターの光が線のようになるくらいの効果しか出なかった。演出法も更に考えていきたい。

 

新たなルート、とても険しいがこれからもどんどんアタックしていきたい。

 

Alleingehen2.0 SETの撮影動画いくつか上げておきます。

instagram.com

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